高校生の時の話。
高校生の時、東京から北海道の札幌に引っ越した。
でもよく東京にも帰った。
当時、私はANAのスカイメイトに入っていた。
スカイメイトとは(今では他の航空会社も実施しているが)、22歳以下の人は誰でも加入できる。身分は空席待ちだが、国内線であれば何と半額で乗る事ができるというすぐれものだ。加入しない手はない。
そんな中、これは高校2年生の春休みに起きた話である。
私は1人、空港で帰りの飛行機を待っていた。
しかし長旅の疲れで知らない間に寝てしまったのだ。
たしか飛行機の離陸時間は17:05くらいだったと記憶している。
私が空港についたのは15:00すぎ。まだ飛行機に慣れていない私は常に早目に行動していたのだ。ただその結果、中途半端に時間が余り、寝てしまったらしい。
……!?
目が覚めるともう外の景色はすっかり暗くなっていた。しまった!寝ていたか。どれくらい寝ていたか確認するとなんと17:10!
もう飛行機の離陸時間になっているではないか!
絶望を感じ始めたまさにその時、アナウンスが流れたのだ。
おお!天の助け!
どうやら少し遅れていたらしい。
荷物を持って駆け込もうとしたその時、
「……!」
足に激痛が走り全く動けなかった。
寝ている間によほど変な格好で寝てしまったらしく、足がまったく動かないのだ。
間違いなく、この時が人生で一番足がしびれた時だった。
なぜなら歩くこともできなかったのだから。
ちなみに足のしびれを治す効果的な方法は
1)立ち上がる
2)こする
3)足の指を動かす
の3つだそうだ。
しかしそんな事は言っていられない。せっかく飛行機に乗れるチャンスができたのだ。
私は荷物を持ち、ほとんど地面をはうように、激しく足をひきずりながらカクンカクンと走り(歩き)だした。
「すみませーん。その飛行機、乗りまーす。」
恥を捨てて空港内で叫ぶ。そうするとANAの客室乗務員が2、3人心配そうな顔をして近づいてきてくれた。
そして手際よく車椅子が一台、運ばれてきた。
いらないんですけど。
しかし確かに今の私の歩き方を見れば足に障害を持っていると思われても仕方ない。しかも「足がしびれているだけです。」とはなかなか言えず、相手のなすがままに車椅子に乗せられる私。心の中ではパニックと笑いをこらえる気持ちでいっぱいだった。
しかし、これが失敗だったと後で気づく。機内でも車椅子の私は当然、立ち上がってトイレに行くわけにもいかない。普通のチケットだが、時間がなかった事もありビジネスクラスの良い位置に座らせてもらっている。おかげで機内でまったく動く事ができなかった。これは到着したらさっさと車椅子を乗り捨てて逃げるしかない。
・・・到着するとすでに連絡が行き届いていたらしく、私の為に車椅子が用意されているではないか!
ぐ、ぐむー。ANA、ナイス。
結局、また車椅子に乗せられ、出口まで客室乗務員が押してくれてのだが、かわいそうなのは私の母である。
空港に迎えに来てくれたのだが、突然息子が車椅子に乗っていたのでとても心配していた。「どうしたの?どうしたの?」と必死に聞いていたが、今現在、客室乗務員に押してもらっている私に真実を話す勇気はなく、下を向いてじっとしていた。(完)